若き修行僧に神のご加護を。2009/03/06

若き修行僧に神のご加護を。
先日、食事の時の会話で、
唐突に高校生の頃の事を思い出した。
 
こんな事を言うと、周りの人間は口を揃えて、
私に高校生の頃があったとは思えない、
などと失敬なことを言うのはどういう訳だ。
 
それはともかく、私が高校2年生の時の話である。
 
当時、実家を離れて下宿暮らしをしていた。
そこは3食賄い付きの下宿屋で、2階に4人分4部屋あり、
1階は家主の住居になっており、
A商店という食料品の店もやっていた。
 
この下宿屋の食事が不味かった。
それはもう、とてつもなく不味かったのだ。
食料品店の方も、鮮度の悪い商品ばかりだったので、推して知るべしではあった。
しかし、学校に紹介された物件だったため、あらかじめリサーチなどできなかったのだ。
この店の前を通勤で通る英語の女性教師に「毎日しなびたものを食べてるのね」と同情されたほどである。
 
女将さんは、ほとんど口をきかない、陰気で感情の起伏の全く感じられない人で、
用意する食事はどれも例外なく不味く、今から思うと完全な味覚障害だったのかも知れない。
 
特に、数日に一回必ずでてくる得体の知れぬ料理があった。
何かをみじん切りにしたものが煮込まれた、どろりとしたものが御飯にかけられている。
カレーともハヤシライスとも明らかに違う、その緑がかった茶色いモノは、
一口食べるごとに嘔吐きそうになる、およそ食べ物とは言えない代物だった。
 
しかもそれを、何を勘違いしているのか、変に教育者のようなつもりでネチネチ説教など始めたりする、
その下宿屋の親父が晩酌している同じテーブルで、向いに座って完食しなければならないのだ。
 
一体前世でどんな悪いことをやれば、こんな罰ゲームを食らうはめになるのかと、神を呪いたくなった。
これも若き日の修練だと何とか自分を納得させ、修行僧のような崇高な精神が宿ったような気がする。
ま、翌年引っ越したのは言うまでもないが。
 
気まぐれにGoogleマップで、このA商店を探すとまだあるではないか!
しばらく近くに立ち寄ってないが、まだあの夫婦は健在で、下宿や商店を運営しているのだろうか。
可哀想に、さらに何世代もの犠牲者が生まれたのやも知れぬ。
だとすれば、後輩たちのかくも過酷な境遇に笑いを涙を禁じずにはいられない。
 

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