参った。傘を盗まれたのである。
　
大きめのワンタッチとは言えビニール傘なので、
経済的にはそれほど痛手ではないのだが、
いかんせん土砂降りの中である。
びしょ濡れになりながら帰った。
　
比較的近所のドラッグストアで、
ティッシュなどを買うために
ほんの5分ほどの入店の間、
傘立てに置いていた間にである。
　
傘を取りにいった時にあったのは、普通の傘と、
ワンタッチではない小ぶりのビニール傘。
　
絶対にこれらと間違うはずがないだろう。明らかに確信犯である。
　
何が盗まれて困るって、今すぐ必要なものが盗まれるのは、瞬間的に怒りが込み上げる。
まあ、次の瞬間にはおさまって、ただ途方に暮れるのであるが。
　
ふと店頭を見回すと、私のようなものがさすのは、ちょっとはばかられる色合いの傘が販売されている。
まさかあれを買えと。それどころか、もしや店の陰謀か？
　
例によってそんなくだらないことを考えながら、濡れて帰ったのだが、
私は、以前からビニール傘しか持ったことが無い。
視界が広くなる上に、何より安い。
それに今回のように、盗まれても、忘れても、失った時に損失が少なくて済むからである。
　
高級な傘をさして似合うほど紳士然としている訳でもないし。
訳でもないどころか、まるっきり真逆のタイプなのだが。
　
今日はひどい目にあったのだが、なに、ものは考えようだ。
めっきり怪しくなった頭髪を、隣国発の酸性雨にやられたせいだといえるではないか。
なんだか悲しくなってきた。